前回迄にお伝えしたように、かつては『金(きん)=お金(かね)』でした。
そもそも通貨の単位である『両』や『ポンド』等は質量の単位であり、金の重さを表しています。
「光沢性」「不変性」「希少性」「利便性」等の性質により、金は『交換の道具』として利用されてきたのです。金があると、モノやサービスと交換することができ、豊かな生活をおくることができます。その為に、人々は金を追い求めました。
個人レベルでは、商いを行い、金(きん)を手にすることで、個人を豊かにしようとします。
国家レベルでは、諸外国と貿易をし、金を流入させることで、国家を豊かにします。
これが、16~18世紀の絶対王政のもとで採用された重商主義という考え方です。しかし、この重商主義の結果引き起こされたのは、金の流入による物価上昇であり、国民生活の疲弊でした。
我々の生活を豊かにしてくれるのは、人々が提供してくれるモノ・サービスです。金(きん)があるだけでは、我々は豊かにはなれません。お金(かね)も同様です。表面的なお金の額面よりも、モノ・サービスに交換できる力(=購買力)の方が大切なのです。
例えば、1801~2000年の平均物価上昇率は1.33%ですので、1801年に1ドルだったものが200年後には14ドルに。すなわち、200年間でお金の価値(=購買力)は1/14となっています。
一方で、金(きん)の価格は1801年に1ドルだったものが、2001年には約14ドルになっています。
驚くべきことに、金価格の上昇率と平均物価上昇率はほぼ一致しており、金の価値(=購買力)は変わっていないのです。
1801~2000年の間では、世界の人口変動、使用目的や採掘コスト等金(きん)を取り巻く環境の変化、何よりも世界規模の戦争や政変、大規模な社会的変容もありました。ただし、短期では金の価格は変化しますが、長期では金の価値は変わっていません。
これこそが、金は安全資産と言われる理由であると考えられます。