【安全資産としての金(きん)①】

金(きん)は安全資産と言われます。
しかし、金の価格は、時には株や不動産よりも変動幅が大きく、金で保有するよりも、現金で保有していた方がよっぽど安全だと感じます。
価格が大きく下がる可能性があるにも関わらず、何故、金は安全資産と言われるのでしょうか?
これには歴史的な背景があります。

人類は古くから金に魅了されてきました。
魅了された理由は、光沢性・不変性・希少性が挙げられますが、同様な性質を持つダイヤモンドなどに比べて加工が容易なことから利便性も高く、古くから『交換の道具』として重宝されてきました。
世界最古の貨幣とよばれるリディア王国のコインは、紀元前600年頃から利用されていたと言われていますので、日本の皇暦と同じくらいの歴史があります。
金が流通し出すと、金の便利さに多くが気付いたことから、金を蓄えようとする人々が出てきます。そのニーズに応えたのが銀行の起源です。かつての銀行は、金を預かる際に預かり証(銀行券)を発行していました。所謂、兌換(だかん)紙幣です。

預けられた金は一定期間引出されないので銀行には常に一定量の金が存在していたことから、その一部の金を貸出に回し、銀行は収益を得ていました。
更に、人々が現物の金ではなく銀行券での交換を始めたので、金でなく銀行券を貸出することで銀行は収益をあげられるようになります。

しかし、欲をかいて放漫な貸出を行った銀行は、貸出金を回収できずに、預かり証だけが市中に出回ります。預かり証を持った人が一斉に金を引き出しにいくと、その銀行には金が不足していることになり、預かり証が紙切れになってしまった。そんなことも多々ありました。
その時代では『銀行券で保有するよりも、金で保有していた方が安全であった』は事実と考えられます。

では、現代の貨幣(不換紙幣)でも、同じ様なことが当てはまるのでしょうか?
次回で、考察します。